画像生成AIの現状と企業スタンスについて

Adobe Photoshop製品版に「生成塗りつぶし」機能が追加。商業利用もOK

昨年から盛り上がりを見せていた画像生成AIが、ついにグラフィック界の雄であるAdobeのPhotoshopに組み込まれました。ワンタッチで指定した範囲に自動で画像を描画してくれます。さらに重要なポイントは、Adobeの画像生成AIは著作権などの権利問題をクリアしており、そこで生成された画像は余計な紛争に巻き込まれることなく、商業利用も可能となっている点でしょう。

具体例その1

具体例で見てみましょう。これはビルの上から写した愛媛県松山市南堀端の夜景写真です。※一部社名がはっきり読み取れる部分は加工しています。

 

これの縦横を大きく拡大し「生成」ボタンを押しただけで出力されたのがこちらの画像です。

 

見てわかる通り、元画像を拡大したわけではなく、上下左右に元画像のイメージそのままに追加描画されました。もちろん追加部分の建物などは実在のものではありませんから、現地を知らない人には、これがAIが生成した画像だとはなかなか気付かないと思われます。というか、現地を知る人間でもわからないかもしれません。

では、今度はキーワード(画像生成AIではプロンプトと言います)を入力してから「生成」ボタンを押してみましょう。与えたキーワードは「繁華街」と「ニューヨーク」です。

 

まあ細かな点ではいろいろ問題もありますが、それっぽい画像に仕上がりました。既に元画像が何だったのかさえわからなくなってしまいそうです。その気になればちょっと加工するだけで印刷やWEBなどでも利用可能なクオリティでしょう。

具体例その2

具体例その1は、既存の写真を元にして、見えていない部分を描き足すという処理でしたが、元が白紙だとどうでしょう。試しに、全くの白紙に「スチームパンクの未来都市」というキーワードを与えて、Photoshopが出力してきたのが以下の画像です。

こうなるともう「塗りつぶし」でも何でもありません。AIがゼロからキーワードだけを頼りに全ての絵を描いてしまったのですから。私は画面の前で、描き上がるのを待っているだけ。すごい時代になったものです。

権利問題と倫理問題

で、今回の問題点はここからです。確かに簡単に絵や写真を生成できるようになったし、権利問題もクリアしているわけですが、では企業として、AIが生成した偽物画像をそのまま使っていいのかどうか、という倫理問題が出てきます。

AI画像についてはまだ法整備もできていません。なのでいろいろ危険だから全面禁止!なんて言っていたら時代に取り残されてしまうかもしれませんし、かといって使い道を間違えると詐欺だ!騙しだ!などと非難される可能性もあります。

もし社内的には禁止していたとしても、発注した外部のクリエイターが使ってしまう可能性も否定できません。特にAIに関する知識がなくてもphotoshopが使えれば簡単に作れてしまうのですから。

そうなってくるとやはり企業としてのAI生成画像の利用基準というのを定め、内外に明示してそれに従っていくというステップが現時点では必要になってくると思われます。

全面解禁や全面禁止という選択肢以外にも、使ってもよいがその場合は「写真はAIによる自動生成です」というような注意書きを入れるとか、紛らわしい使い方はしないとか(その基準が難しいのですが)、当面は特定のジャンルだけで利用を許可して様子を見てみるとか、いろいろな選択肢が考えられると思われます。

その基準を企業ごとに制定することが必要で、それも早急に対応すべきなのではないでしょうか。既にAIによる画像生成が商業利用可能な段階まで進んでいるのですから。

どうすべきか

例えば、印刷物を作成する際、使用する風景写真の解像度が足りなくて必要なサイズが確保出来ないので、右端に30ピクセル分だけ拡大して生成塗りつぶしをした。それがどこにでもある単純な森林の写真であり、塗りつぶそうがそのままだろうがほとんど違いがない。そんな些細な生成でも許されざるものなのか。

これさえ拒否してしまうと、画像生成AI自体を否定するのとほとんど違いがないように思えます。企業としてそのスタンスでいいのか。

ではどのような基準を設ければいいのか、正直なところまだ私にも明確な解を持ち合わせておりません。ここまで書いておきながら申し訳ないのですが、それが偽らざるところです。恐らく現時点で正解を明示できる人は存在していないでしょう。

アメリカ議会だとて、まだつい先日有識者を集めて公聴会を開いた程度であり、まだ何も決まってないのに実用化されてしまったわけですから。

とはいえわからないからと放置しておくわけにもいかないでしょうから、もしAI生成画像の使用についてのご相談があればお知らせください。企業ごとに環境も異なるでしょうから、それらを踏まえたうえで私の知りうる範囲内で対応させていただきます。